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仕事を続けながら手と向き合うための判断基準
手の痛みがあっても、薬や装具、リハビリテーション、注射といった保存的な方法を組み合わせることで、仕事を休まずに対処を進められるケースは多くあります。この記事では、それぞれの治療が作業に与える影響や、原因・症状によって通院頻度が変わる理由を整理します。勤務時間を減らさずに通うための準備や、家庭での負担軽減策もまとめました。
この記事の要点まとめ
- 手の痛みには、飲み薬や装具、リハビリ、注射などがあります。仕事の中身や症状に合わせて、医師と相談しながら選びます。
- 通院の回数は、原因や症状、治療への反応、手を使う量によって変わります。診察とリハビリそれぞれの目的に合わせて決めていきます。
- 仕事の内容や通院の予定を受診のときに伝え、負担を減らす工夫を相談します。しびれや力の入りにくさがあるときは、早めの受診を考えましょう。
仕事を続けながら受けられる手の痛みの治療には何があり、作業にどう影響する?

飲み薬や湿布、装具、リハビリテーション、注射はいずれも仕事を続けながら選ばれることが多い方法ですが、作業への影響の出方がそれぞれ異なります。握る・つまむといった動作との兼ね合いや注意点を順に整理します。
| 治療の選択肢 | 主な目的 | 作業中の手の動きへの影響 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 飲み薬・湿布 | 炎症や痛みを和らげる | 動きをほとんど妨げない | 痛みが和らいでいる間に手を使いすぎない、持病や飲んでいる薬を伝える |
| 装具(サポーター) | 関節や腱の動きを抑え安静を保つ | 素材や形で細かい作業に制限が出る | 皮膚の擦れ、手袋との干渉 |
| 注射 | 強い炎症を局所で抑える | 当日は過度な負荷を控える | 当日の手の使い方、体調の変化があれば伝える |
| リハビリテーション | 動かし方の見直し、物理療法 | 作業後のケアや動作の工夫に活かす | 一時的な筋肉の張りや痛みの変化 |
飲み薬・湿布は作業中の手の動きを妨げにくいが、痛みを隠して使いすぎる点に注意
痛みをやわらげるために、湿布や塗り薬に加えて、炎症をおさえる飲み薬を使うこともあります。手を固定しないため、職場で作業する際も動きを制限しにくい点が特徴です。
ただし、痛みが落ち着いている間にいつも通り手を使いすぎると、負担が積み重なることがあります。持病や普段飲んでいる薬があるときは、あわせて医師へ伝えておきましょう。
装具を着けたまま手袋は使える?つまむ作業への影響と着ける時間帯の工夫
装具(サポーター)は、親指のつけ根や手首を軽く支えて、かかる力を減らす方法です。かたい支柱が入ったものからうすい素材のものまで種類があり、形によって職場の手袋を着けられるか、細かい物をつまみやすいかが変わります。市販のサポーターはおおむね1,500〜6,000円ほどで、これは当院の費用ではありません。実際にかかるお金や保険が使えるかどうかは、医療機関や選ぶ装具によってちがいます。作業中は外し、家に帰ってからの家事や寝るときだけ着けるなど、時間帯を分ける工夫も相談できます。
注射を受けた日やその後は、どの程度手を使ってよい?
注射を受けた日は注射したところを強く握る・ひねるといった作業を控え、翌日以降は痛みや腫れの様子を見ながら、軽い作業から少しずつふだんの作業へ戻していくのが一般的な目安です。腱鞘炎やばね指などで痛みが強い時期には、患部のまわりへの注射が検討されることがあります。入浴や手の使い方、作業へ戻る時期は、痛む場所や仕事でかかる負荷によって変わります。
重い荷物を持つ日や忙しい時期を避けるなど、あらかじめ勤務予定を伝えて実施する日を相談すると調整しやすくなります。なお、注射は間隔や回数に配慮しながら医師が適応を判断します。
リハビリで手の使い方そのものを見直し、再発しにくい状態を目指す
痛みをその場でやわらげるだけでなく、ストレッチや仕事中の手の使い方を見直し、再発しにくい体づくりを目指すのがリハビリテーションの役割です。手根管症候群の患者さんに、神経のすべりをよくする運動などを行った研究もあります1。理学療法士や作業療法士が一人ひとりの症状に合わせて計画を立て、温めるケアや低周波治療器も組み合わせながら、仕事や家事の動きに合った工夫を一緒に考えていきます。
手の痛みの通院頻度はなぜ人によって違い、何で決まる?
手の痛みの通院頻度は、原因となる病気や症状の程度、治療への反応、仕事で手を使う量によって変わるため一律には決まりません。また、医師による診察とリハビリテーションでも通う間隔の考え方が異なります。
腱鞘炎・手根管症候群・母指CM関節症で通い方が変わる理由
手には骨や関節、腱、神経がせまい範囲に集まっています。はじめての診察では、レントゲンや超音波(エコー)などで骨の形や、腱・神経のまわりの様子を確かめ、原因に合わせた計画を立てます。
たとえば腱の炎症が中心の腱鞘炎、神経が押される手根管症候群、親指の付け根の軟骨がすり減る母指CM関節症では、装具の使い方や運動の進め方が変わることがあります。そのため、経過を確かめるタイミングもそれぞれの状態に合わせて組み立てられます。
診察の再診間隔とリハビリの通院間隔は別に考える
医師の診察は、薬や装具を使ったあとの変化を確かめたり、治療の進め方を見直したりするために、ある程度あいだをあけて行うのが一般的です。一方、リハビリテーションでは手首や指の動かし方を確かめたり、機器を使ったケアをしたりするため、症状や暮らしのリズムに合わせて通う回数を決めます。一人ひとりの症状に合わせて計画を立て、ときどき見直しながら通うペースを調整していきます。
通院回数が多いほど早く治る?治療を見直すタイミングの考え方
「毎日通えばそれだけ早く落ち着く」「痛みが軽くなったら自己判断で通院をやめてよい」と考える方もいますが、大切なのは手の状態や治療への反応を見ながらペースを調整することです。手や手首のけがでは、治療費だけでなく、仕事がはかどらなくなることによる負担も大きくなりうると指摘されています2。数週間続けても変化が乏しい場合やしびれが広がる場合は、我慢を重ねず治療の方法を見直す時期と考えます。
ポイント
通院の間隔は原因や仕事の負荷によって異なり、診察とリハビリテーションそれぞれの目的に合わせて調整していきます。
勤務時間を減らさずに通うには、受診時に何を伝えればいい?
職場で担当している作業内容や勤務の時間帯、症状の経過を具体的に伝えると、仕事への影響を抑えた治療や通院日程を相談しやすくなります。受診前の整理のしかたと職場への伝え方をまとめました。
受診前にメモしておきたい作業内容と症状の記録
診察室では緊張して伝え忘れることもあるため、スマートフォンのメモなどに次の項目を書き留めておくと説明がスムーズです。
- 痛む動きと時間帯(包装テープを引くとき、朝起きてすぐや夜など)
- 1日に作業する時間と、職場で使っている手袋や道具の種類
- 指先のしびれがあるか、どの指がしびれるか
- 家での料理や介護など、仕事のほかに手を使う場面
- いま治療している病気や飲んでいる薬
たとえば糖尿病などの持病がある場合は、食事や運動、薬でどのように治療しているか3も診察の手がかりになるため、お薬手帳とあわせてご提示ください。
勤務の前後に通うときの受付の使い方
仕事の前やあとに通う場合は、受付のしかたを前もって確かめておくと予定を立てやすくなります。当院は予約なしでそのまま来ていただけるほか、当日の順番受付も使えます。診療は月・火・水・金が午前と午後、木・土は午前だけで、受付は午前は11:30、午後は18:00までです。
ただし混雑状況によっては受付終了時間の前に受付を止める場合があるため、来院前にお知らせをご確認ください。また、医師の診察日とリハビリテーションの予定を勤務シフトに合わせてどう組むかも、受診時にご相談いただけます。
上司にはどこまで伝える?作業調整を相談するときの伝え方
職場へ相談する際は、詳しい病名を説明するよりも「どの動作で痛みが出るか」「どのくらいの期間、どんな配慮があると続けやすいか」を具体的に伝えるほうが相手も対応を考えやすくなります。担当をすべて変えてもらうのが難しい職場もあるでしょう。その場合でも、同じ動作が続く時間を分ける、作業の順番を入れ替える、補助具を使うといった調整から切り出してみてはいかがでしょうか。
ポイント
痛む動作や使う道具、通える曜日をメモして受診時に共有すると、勤務を続けながら取り組める計画を立てやすくなります。
職場と家庭で手の負担を減らすには?早めに相談したい変化はある?
作業や家事の中で、手首を強く反らしたり親指の付け根に力を集中させたりする動きを減らす工夫が負担の軽減につながります。一方で、しびれや力の入りにくさ、夜間の痛みがあるときは先延ばしにせず医療機関へご相談ください。
包装テープや調理で親指・手首に負担をかけにくくする工夫
職場での梱包作業では、テープを指先だけで強く引っ張らず、据え置き型のテープカッターを使ったり、手首をまっすぐに保ったまま体ごと動かしたりすると一箇所への負荷が分散します。帰宅後の調理でも、片手鍋を両手で持つ、包丁の柄に滑り止めを巻いて握る力を減らす、硬い食材は下ごしらえ済みのものを取り入れるといった方法があります。すべてを一人で抱え込まず、袋を開ける作業や洗い物の一部を家族に頼むことも手首を休ませる大切な工夫です。
しびれ・力の入りにくさ・夜になると手が痛いときは早めに相談を
痛みが一時的に落ち着いていても、次のような変化がある場合は早めの受診をご検討ください。
- 指先のしびれが続く、または範囲が広がってきた
- 夜になると手が痛い、明け方にしびれや痛みで目が覚める
- つまむ力が入りにくく、小銭やボタンが扱いにくい、物を落とす
- 親指の付け根のふくらみがやせてきた、関節が腫れて熱っぽい
とくに明け方、目が覚めたときにしびれや痛みが強く出る場合は、手根管症候群が関係していることがあります4。また、利き手と反対側の手の関節に痛みが出た場合も、かばい合いによる負担が考えられるため早めの確認が役立ちます。
手の痛みやしびれの原因が手首以外にある場合もある
手の痛みやしびれは、手首や指の使いすぎだけでなく、首の骨(頚椎)の変化が原因となって生じることもあります。この場合、首を後ろへそらすと腕や手の症状が強まるのが手がかりのひとつです5。自己判断でストレッチや市販薬を続けるよりも、まずはどこに原因があるのかを確かめることが遠回りを避ける一歩です4。
聞きなれない言葉かもしれませんが、手のけがや病気をくわしく診る分野を「手外科」と呼びます。仕事を休めないときこそ、通える時間帯やふだんの作業をまとめたうえで、整形外科へご相談ください。
よくある質問
Q. 腱鞘炎が2週間続きました。どうしたらいいですか?
A. 市販の湿布やサポーターで様子を見ても2週間以上痛みが変わらない、あるいは強まっている場合は、整形外科での確認をお勧めします。腱の炎症だけでなく、関節や神経など別の要因が重なっていないかを検査で確かめたうえで、生活に合った対処法を検討します。
Q. 腱鞘炎で仕事を休む期間はどのくらいですか?
A. 症状の程度や職場で手を使う頻度によって異なるため、一律の期間は決まっていません。装具で動きを支えたり、負担の大きい作業動作を調整したりしながら、仕事を休まずに通院を続ける方も多くいらっしゃいます。まずは診察で手の状態と作業内容を医師へお伝えください。
Q. ずっと手の痛みが続く場合、どうすればいいですか?
A. 痛みが長引く背景には、無意識のうちに負担のかかる動かし方を続けていることや、首の神経・全身の関節に関わる病気など、手首以外の要因が隠れていることがあります。痛む時間帯や動作をメモして整形外科を受診し、原因に応じた計画を立てることが大切です。
参考文献
1. Hamzeh H, Madi M, Alghwiri AA et al. The long-term effect of neurodynamics vs exercise therapy on pain and function in people with carpal tunnel syndrome: A randomized parallel-group clinical trial. Journal of hand therapy : official journal of the American Society of Hand Therapists. 2021. PMID: 32893098 / DOI: 10.1016/j.jht.2020.07.005
2. Robinson LS, Sarkies M, Brown T et al. Direct, indirect and intangible costs of acute hand and wrist injuries: A systematic review. Injury. 2016. PMID: 27751502 / DOI: 10.1016/j.injury.2016.09.041
3. 国立健康危機管理研究機構. 糖尿病の治療ってどんなものがあるの?(糖尿病情報センター). https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/010/01.html
4. 「しびれ(上肢のしびれ)」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/paralysis_of_arm.html
5. 「頚椎症性神経根症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_radiculopathy.html
6. Huang X, Wang H, Shi L et al. Effect of transcutaneous electrical nerve stimulation based on wrist-ankle acupuncture theory for pain relief during colonoscopy without anesthesia: a randomized controlled trial. Endoscopy. 2025. PMID: 39053503 / DOI: 10.1055/a-2373-0513
2002年 札幌医科大学麻酔科入局、札幌医科大学医学部附属病院 麻酔科
2003年 旭川赤十字病院 麻酔科
2004年 帯広厚生病院 麻酔科
2005年 横浜市立大学整形外科入局、横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
2006年 聖ヨゼフ病院(横須賀市) 整形外科
2008年 藤沢市民病院 整形外科
2010年 国際医療福祉大学熱海病院 整形外科
2012年 平塚共済病院 整形外科・手外科センター 医長
2015年 熊本機能病院 整形外科(国内留学)
2016年 横浜市立大学 整形外科助教 上肢・腫瘍グループ
2017年 同グループチーフ
2018年 一宮西病院 整形外科 副部長
2023年 たけもと整形外科 開院
2026年 医療法人紫翠会 木曽川たけもと整形外科 理事長
日本整形外科学会/日本専門医機構 整形外科専門医
日本手外科学会 手外科専門医
日本骨粗鬆症学会 認定医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
麻酔科標榜医
産業医、日本医師会認定産業医
小児運動器疾患指導管理医師
身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由)
難病指定医
臨床研修指導医
【所属学会】
日本整形外科学会
日本手外科学会
日本骨粗鬆症学会
日本整形外傷学会
日本運動器科学会
日本肘関節学会
中部日本整形外科災害外科学会
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